「保釈請求書(家族)」と「保釈請求書(被告人)」の書式を公開します【起訴された被告人とご家族へ】©2024川口崇弁護士

起訴されたあなた(被告人)が、

納得のいく刑事裁判を受けられるように🙏

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ご家族が裁判所に「①保釈請求書(家族)」を提出すると、裁判官が保釈の審査をします。
(家族本人情報や続柄の確認のため、2ページ目の提出が必要です。)

被告人本人が裁判所に「②保釈請求書(被告人)」を提出すると、裁判官が保釈の審査をします。

刑事裁判で起訴された被告人・ご家族に向けて、

ご家族や被告人が提出できる保釈請求書を無償公開します。

筆者は、起訴直後の保釈請求にトライする使い方を推奨します。

必ず【注意事項】と説明文を最後まで読んでから、ご利用ください。


【注意事項】

(保釈請求書について)

・免責事項:保釈請求書の利用について、著作者は一切の責任を負いません。自己責任でご利用ください。

・刑事裁判実務を理解した弁護士が作成しており、保釈請求書の利用により利用者らに不利益になる事態は想定されません。しかし、万が一、利用者らに何らかの損害が発生した場合にも、著作者は一切の賠償義務を負いません。

・弁護人の法律事務所に連絡して、あなたが保釈請求書を利用することを伝えてください。

(ご相談等について)

・事件や保釈に関する疑問は、あなたの弁護人に質問してください。

・事件や保釈のセカンドオピニオン、ご相談は有料です。著作者の川口崇弁護士への法律相談料は1時間11000円です。ご相談には予約が必要です

・著作者の川口崇弁護士に、警察署や拘置所に出向いて勾留中の被告人ご本人と面会するセカンドオピニオンをご希望の場合、初回面会報酬(5万5000円)が必要です。神奈川県外の場合には出張日当と交通費が発生します。ご家族等からご連絡をいただき、面会前に振込みで報酬をお支払いいただく必要があります。

・勾留中の被告人ご本人のお手紙による直接の面会のご希望には対応できません。必ず、ご家族等からご連絡いただくようお願いいたします。

1.保釈請求書

1-1.保釈請求書の印刷と裁判所への提出

PDF等ファイルをダウンロードして印刷して、

必要事項を記載して、署名・押印のうえで

刑事裁判を担当する裁判所に提出してください。郵送で問題ありません。

①保釈請求書(家族)ダウンロード

📄PDF版 📖Word版

②保釈請求書(被告人)ダウンロード

📄PDF版 📖Word版

(印刷方法)

PDF等のデータ印刷は、コンビニでも行うことができます。

パソコンからUSBメモリにPDFデータを保存し、コンビニプリントが簡単です。

パソコンとプリンターを持っていなくとも、スマホアプリから印刷が可能です。

セブンイレブンローソンファミリーマート の他、コンビニプリントで印刷できます。

(説明動画:セブンiPhoneセブンAndroidローソンファミマ


被告人ご本人が警察署や拘置所に勾留されており、

ご家族がこのページをご覧になっている場合には、

「①保釈請求書(家族)」を利用して保釈請求するか、

「②保釈請求書(被告人)」と「本稿のページを印刷」して

被告人ご本人に郵送して差し入れて被告人が保釈請求できます。


ご友人は「①保釈請求書(家族)」を利用できません。

ご友人は「②保釈請求書(被告人)」と「本稿のページを印刷」して

被告人ご本人に郵送して差し入れて被告人が保釈請求できます。


1-2.ご家族による保釈請求書の説明

①保釈請求書(家族)ダウンロード

📄PDF版 📖Word版

【①保釈請求書(家族)の記載事項】

(保釈中の制限住居地)

□保釈中、被告人住所地に居住させます。

□保釈中、以下の住居に居住させます。

 __________(__方)

※どちらかに☑チェックを入れて下さい。
一般に、請求者と同居の方が保釈が許可されやすいです。


__地方裁判所御中
※勾留をしている都道府県の裁判所名を記入してください。


被告人氏名_______(___罪)

※勾留中の被告人の氏名を記入してください。

※起訴状に記載された「罪名」を記載すると、裁判所が事件を特定しやすいです。

ご家族が「罪名」をわからなければ、未記入でも問題ありません。


裁判所のシステム上、裁判所書記官は被告人氏名がわかれば、事件名を検索できます。


保釈請求者____________

続柄:被告人の□夫妻□父母子□兄弟姉妹

※請求者氏名を署名・押印してください。
※続柄に☑チェックして該当項目に○をつけてください。

☑保釈請求者の電話番号(緊急連絡先)

電話番号_____________

※裁判所書記官から電話で事情を聞かれることがあります。


☑請求者(家族)と住所地の公的証明書

(マイナンバーカード表面・運転免許証等)

※請求者本人の請求であることと制限住居を証明します。


(被告人と保釈請求者の「続柄」の証明)
□両名記載の戸籍謄本を添付します
□両名記載の住民票の写しを添付します
□本保釈請求後に、追加で郵送します

※戸籍謄本または住民票の写しの提出により

被告人とご家族(保釈請求者)の続柄を証明します。

上の2つのどちらかに☑チェックを入れてください。

※被告人と保釈請求者の両名が記載された

戸籍謄本・除籍謄本または住民票の写しが必要です。


戸籍謄本の取得が難しい、時間がかかる場合に、

ひとまず保釈請求書を送付して、□追加で郵送も選べます。


1-3.被告人による保釈請求書の説明

②保釈請求書(被告人)ダウンロード

📄PDF版 📖Word版

【②保釈請求書(被告人)の記載事項】

(保釈中の制限住居地)

□保釈中は、私の住所地に居住します。

□保釈中は、以下の住居に居住します。

______________(__方)

※どちらかに☑チェックを入れて下さい。
一般に(事件関係者以外であれば)
ご家族と同居の方が保釈が許可されやすいです。


__地方裁判所御中
※勾留をしている都道府県の裁判所名を記入してください。
(裁判所がわからなければ、拘置所職員に聞いて下さい。)


被告人_________(___罪)
電話番号_____________
※氏名を署名して、連絡可能な電話番号を記入してください。
※起訴状に記載された「罪名」を記載するとより親切です。
起訴された犯罪名があると、裁判所が事件を特定しやすいです。
裁判所のシステム上、裁判所書記官は被告人氏名がわかれば、事件名を検索できます。


【保釈請求書は必要最低限の内容としています】

保釈請求書には、刑事訴訟法上要求される

必要最低限の要件を記載して、余計な記載をしていません。


・被告人が事件の内容を認めている。

・被害者への被害弁償をした。示談が成立した。

という内容が保釈請求書にあると、たしかに、

裁判官は証拠隠滅のリスクが低くなると判断します。


しかし、保釈請求書は、裁判所に提出をして、

担当検察官も目にするため、余計なことを書くと

刑事裁判で被告人に不利になるリスクがあります。

複雑にせず、必要最低限の要件のみを記載しました。

☑罪証隠滅しない・☑関係者に接触しない・☑期日に出頭する

この3点を約束することで、裁判官に保釈許可を求めています。

以下に述べるように、被告人に特段有利な理由がなくとも、

裁判官は、権利保釈・必要的保釈の場合には、保釈を許可すべきです。

検察官は保釈に反対する「意見書」を裁判所に出します。
検察官が保釈に賛成してくれることはありません。
勾留が不要なら検察官は釈放もできますからね…


【被告人やご家族の保釈請求が認められるか】

保釈は裁判官の判断になります。

権利保釈の場合には、保釈「を許さなければならない。」とされます(刑事訴訟法89条)。

保釈請求をして、保釈審査を担当する裁判官を信じましょう!

裁判所の「保釈許可決定」
保釈保証金額、制限住居等が記載される。

【保釈保証金額】

「保釈を許す場合には、保証金額を定めなければならない。」(刑事訴訟法93条)

保釈保証金額は、被告人の逃亡リスクの高低や資産状況により上下します。

保釈保証金額は、保釈許可決定書に記載されます。

保釈保証金の相場は、150万円程度を想定してください。

東京弁護士会は「100万円以上が一応の目安と言えます」と助言しています。


【保釈保証金を収められないデメリットは釈放されないことだけ】

「保釈を許す決定は、保証金の納付があつた後でなければ、これを執行することができない。」(刑事訴訟法94条1項)

保釈保証金を裁判所に納入することができない場合の

デメリットは「被告人が釈放されないこと」に留まります。

保釈許可は出たが保釈保証金を納入できない場合にも、

わざわざ保釈請求を取り下げる必要はありません。

ただし、保釈許可は出たが保釈保証金を納入できない場合には、

裁判所書記官に対して、電話で伝えておいた方が良いです。

裁判所書記官は、保釈保証金の納入当日中の釈放を目指しています。

土日祝日に納入しても、裁判所が納入を確認できず、釈放されません。

裁判所書記官は、保釈許可決定後に早く釈放するため

ご家族による保釈保証金の納入時期を聞きたいと思っています。

ご家族が保釈保証金を納入できない場合にも、

事情を察してくれて、納入の催促をすることはありません。


2.保釈請求却下に対する不服申立書

2-1.保釈請求却下に対する不服申立書の説明

「①保釈請求書(家族)」「②保釈請求書(被告人)」を使って保釈請求をして、

裁判所に保釈請求が却下された場合にも、不服申立て(抗告・準抗告)が可能です。

最高裁判例:保釈却下裁判を受けた家族は、抗告・準抗告の申し立てが可能です。


PDF等ファイルをダウンロードして印刷して、

必要事項を記載して、署名・押印のうえで

刑事裁判を担当する裁判所に提出してください。郵送で問題ありません。

①保釈却下への不服申立書(家族)

📄PDF版 📖Word版

②保釈却下への不服申立書(被告人)

📄PDF版 📖Word版

裁判所の「保釈請求却下決定」テンプレ回答

「保釈請求却下決定」は、テンプレ回答で具体的な理由がありません。

主文 本件保釈の請求を却下する。

理由 被告人は下記(1-7のいくつか)に該当し、かつ、裁量で保釈の許可をするのは適当と認められない。

…これだけです。理由になっていません。


不服申立て書(準抗告・抗告)を提出すると、

裁判官は、保釈を却下した具体的な理由を記載してきます。

保釈を許可する決定に変更するかもしれません。

被告人やご家族は、せめて

裁判所が保釈請求を却下した理由を知りたいと思います。

そのような場合に不服申立て書をご利用ください。

不服申立ての審査では、テンプレではなく文章で理由を回答します。

不服申立ての審査は、保釈却下をした裁判官と別の裁判官がします。


3.保釈請求制度への問題意識

3-1.保釈請求をしなければ終わらない起訴後勾留

日本の裁判所と検察庁は、

事件捜査中の被疑者段階(最大20日間)だけでなく、

検察官が裁判所に起訴した後の被告人段階でも、

自ら釈放せずに、被告人を裁判期間中に勾留し続けます。

被告人の勾留は、刑事訴訟法上「二月間」とされますが、

一般に、裁判所は裁判終了まで被告人の勾留を更新します。

起訴後の被告人は、保釈が許可されない限り、

執行猶予(または無罪)判決が言い渡されるまで、

釈放されず警察署・拘置所で勾留をされ続けます。


筆者は弁護士として、起訴後勾留は異常な取り扱いだと感じます。

日本は法治国家であり、憲法31条は「無罪推定の原則」を定めます。

検察官に起訴された被告人とはいえ、

すべての被告人は、判決が言い渡されて確定するまで

「無罪」を推定された人間です。

裁判所が、無罪推定される人間を起訴後勾留し続けてはなりません。


起訴後の被告人勾留状態を前提に「保釈」という制度が存在します。

刑事訴訟法

第八十九条 保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない

 被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
 被告人が常習として長期三年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
 被告人の氏名又は住居が分からないとき。


第九十条 裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。

刑事訴訟法89条は、1号-6号の例外事由ではない限り、

保釈を「許さなければならない。」と定めています(権利保釈・必要的保釈)。

法は、1号-6号以外の事案で、裁判所に保釈を許可することを求めます


(起訴後勾留と保釈の問題点)

しかし「保釈」制度は、被告人側に不利な設計をされています。

保釈の請求があつたときは」と「請求」要件を課しており、

被告人側(の誰か)による保釈の請求がトリガーになっています。

被告人側(の誰か)が裁判所に対して「保釈の請求」をしなければ、

裁判官は、絶対に!絶対に!自ら釈放や保釈を許可してくれません

(実務では、裁判官は、刑事訴訟法91条の義務的保釈を無視しています。)


保釈を請求できる者は、刑事訴訟法88条1項に定められます。

刑事訴訟法

第八十八条 勾留されている被告人又はその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者直系の親族若しくは兄弟姉妹は、保釈の請求をすることができる。

保釈の請求権者は、弁護人に限られません。

被告人本人が保釈を請求できます。

被告人の家族(夫妻、父母・祖父母・子・孫、兄弟姉妹)保釈を請求できます。


②被告人や①家族が保釈請求できることは、

表立って語られてきませんでした。

「裏ワザ」のように隠されてきました。


法律素人の②被告人や①家族に保釈請求をされると

裁判所が「対応が面倒くさいから、やめてほしい」という本音が見えます。


もちろん、裁判所は、本音を明言したことはありません。

しかし、裁判所ウェブページの情報公開から消極姿勢が見えます。

■刑事事件では、広島高等裁判所で一部書式がアップロードされているだけです。

「保釈請求書」の裁判所書式は、全国の裁判所のウェブページに存在しません


■民事事件では、公式の書式がいくつもアップロードされています。(比較として)

民事訴訟Q&Aでは、民事訴訟提起のアドバイスまでしており、親切です。

Q.裁判(訴訟)を起こすには、弁護士(代理人)に依頼しなければなりませんか?

A.本人自身で手続を行うことができます。裁判(訴訟)の手続を行ううえで、代理人として弁護士に依頼するかどうかは、ご本人が決めることになります。


裁判所のアドバイスは、刑事事件の保釈請求でも同じことが言えます。

Q.保釈請求をするには、弁護士(弁護人)に依頼しなければなりませんか?

A.被告人本人自身と被告人のご家族が手続を行うことができます。保釈請求の手続を行ううえで、弁護士(弁護人)に依頼するかどうかは、被告人ご本人や被告人のご家族が決めることになります。


刑事訴訟法は、②家族の保釈請求権を認めています。

家族から地方裁判所の担当部に問い合わせがあったとき、

地方裁判所の裁判所書記官はどうしているのでしょう。


筆者は、○横浜地方裁判所で

家族による「保釈請求書」の裁判所書式をもらえました。

高裁直下8箇所の地方裁判所の刑事部保釈担当に電話して、

書記官に裁判所書式があるか聞いた結果は以下のとおりです。

✖札幌・○仙台・○東京・✖名古屋・✖大阪・○広島・○高松・✖福岡

(広島地方裁判所の「保釈請求書」書式がExcelで作られた良い内容でした。)

裁判所書式は、各地方裁判所にひっそりと眠っている場合があります。

保釈審査をする裁判官さえ、裁判所書式の存在を知らないかもしれません。


家族による「保釈請求書」の裁判所書式は、

裁判所が作成し地方裁判所に存在している場合があるにもかかわらず、

裁判所ウェブページには、全くアップロードされていません


そこで、筆者が保釈請求書(家族)」を作成して公開しました。

インターネット上では、日本初・日本唯一の試みでしょう。

筆者が検索した時点で、弁護人用の保釈請求書の書式は見つかりますが、

被告人用や家族用の保釈請求書の書式は、インターネット上に存在しませんでした。

「保釈請求は、私選弁護人にやってもらいなさい💴」という営業助言ばかりです。

ご家族こそ保釈請求書の書式を欲しているでしょうから、ぜひご活用ください。


刑事訴訟規則

(申立その他の申述の方式)

第二百九十六条 裁判所又は裁判官に対する申立その他の申述は、書面又は口頭でこれをすることができる。但し、特別の定のある場合は、この限りでない。

2 口頭による申述は、裁判所書記官の面前でこれをしなければならない。

3 前項の場合には、裁判所書記官は、調書を作らなければならない。

最高裁判所の刑事訴訟規則によれば、

保釈請求は「口頭で」も「できる。」ようです。

さすがに、ご家族が、裁判所書記官に対して、

保釈請求に必要な情報を口頭で伝えることは大変です。

「書面」=「保釈請求書(家族)」をご活用ください。


3-2.保釈請求を国選弁護人に任せたら良いのか

刑事事件では、被告人が私選弁護人を選任することが原則です。

国選弁護人は被告人が貧困その他の事由により弁護人を選任することができないとき」に裁判所が選任します。


私選弁護人であっても国選弁護人であっても、

「身体拘束からの解放に努める。」(職務基本規程47条)

という努力義務を負うことは同じです。

しかし、国選弁護人は私選弁護人よりも保釈請求のハードルが高いです。


私選弁護人は、勾留中の被告人本人ではなく、

ご家族らから着手金を受領して職務にあたることが多く、

すでに社会にいるご家族らとの人間関係(契約関係)が存在します。

保釈保証金の受領や身元引受書の作成等もスムーズにできます。


一方、国選弁護人は、被告人本人としか面会していないことも多いです。

ご家族らとは契約関係が存在せず、ご家族の連絡先さえ知らない事件もあります。

保釈保証金の受領や身元引受書の作成等はスムーズにはできません。

ご家族が被告人と疎遠で保釈保証金を出したくない、という事案もあります。


保釈保証金は150万円程度~が相場とされますが、

被告人本人が大金をもって勾留されることはほぼありません。

被告人本人には保釈保証金150万円を拠出できないことが多いです。

裁判所は「国選弁護人選任請求書・資力申告書」の中で被告人に50万円以上の資力申告を求めています。

【国選弁護人の保釈報酬は安すぎる】

国選弁護人の保釈(釈放)報酬は、非常に低廉に設定されています。

国(法テラスと財務省)が、保釈と人権を軽視しています。

(旧)日本弁護士連合会報酬等基準 は、私選弁護人の

「保釈~等の申立て」の「着手金 報酬金」について

「依頼者との協議により,被告事件及び被疑事件のものとは別に受けることができる」と定めます。

私選弁護人では、保釈請求について、相場では

10万円~20万円程度の着手金と報酬金が必要です。

(保釈許可の難しい事件ではより高額に設定されます。)


一方、国選弁護人は、被告人が「釈放」された段階で

保釈の報酬にあたる「1万円」が、加算されます(算定基準第30条第3項)。

保釈請求して釈放されないと報酬は「0円」です。

✖弁護人が保釈請求した段階 ⇐報酬なし(請求書の作成業務は弁護人負担)

✖裁判所が保釈許可した段階 ⇐報酬なし

○家族らが保釈保証金を納入して釈放された段階⇐「1万円」の報酬

日本司法支援センター(法テラス)の公式説明です。

国選弁護報酬及び費用についての基本的な説明(FAQ)

保釈による特別成果加算を受けるには、国選弁護人自身が、保釈請求を行い(活動要件)、保釈許可決定を得た上で、被告人の身柄が釈放される(結果要件)必要があります

保釈において、国選弁護人自身が保釈請求を行い、保釈許可決定を得ても、結果として、保釈保証金が納付されず、被告人の身柄が現実に釈放されなければ、結果要件を充足しないため、特別成果加算(保釈等)を算定することはできません

国選弁護人が、ご家族らにお金を集めてもらい、

場合によって、親族からお金を借りてきてもらい、

保釈請求書を作成して、原本を裁判所に提出して、

必要に応じて裁判官と面談して保釈条件等を交渉して、

ようやく保釈の許可がされる職務の大変さを考えれば、

保釈着手金が「0円」は国の保釈や人権の軽視であり

釈放報酬金が「1万円」は安すぎる、と批判されます。

弁護人に保釈請求のインセンティブを働かせない理由は、

暗に「国(法務省)が起訴後勾留を続けたい」のか?と疑ってしまいます。


日本保釈支援協会はウェブページで報酬基準を批判をしています。

昨今の国選弁護の実情として弁護人の費やした労力が国選弁護の報酬基準に反映されておらず保釈報酬は僅か1万円と低廉であり、懸命に弁護活動をすればするほど国選弁護人が経済的持ち出しを余儀なくされ国選弁護を時給換算した場合、実質約500円程度とも噂されています。

ちなみに、日本保釈支援協会の利用には数万円の手数料が必要です。

実際に保釈請求をする国選弁護人の報酬を、

日本保釈支援協会の手数料が上回る逆転現象が起きています。


(重要)本稿を読んで勘違いしていただきたくない注意点として…

多くの国選弁護人は、ご家族らが保釈保証金を用意してくれたなら、

事件の性質上、裁判所の保釈許可が難しくても保釈請求をしています

国選弁護人の保釈請求は、弁護士の矜持や人権意識に支えられています。


もっとも、以下のような事案等で、無理を言われても国選弁護人は対応が難しいです。

△ご家族らが保釈保証金を用意できない経済状況なのに、

被告人らが「(ダメ元で)保釈請求してくれ」と要求する場合。

保釈請求をして保釈許可だけをとる弁護活動を期待することは難しいです。

△被告人らが「起訴後一刻も早く保釈請求をしてくれ」と希望する場合。

最優先の対応を希望するなら、私選弁護人を選任するべきでしょう。

国選弁護人の報酬の低廉さから、他の仕事を優先されても仕方ありません。

△保釈を却下された事案・保釈が見込めない事案で、何回も保釈請求を求める場合。

一度保釈却下済みの事案で、同じ状況では裁判所の却下判断も同じです。


4.保釈請求書はこんなときにご活用ください

「①保釈請求書(家族)」や「②保釈請求書(被告人)」は、

たとえば、以下のような事例で有用に利用できます。

○保釈ファーストトライ

筆者は、起訴直後の保釈請求にトライする使い方を推奨します。

起訴直後にご家族や被告人本人が保釈請求をして、

まず保釈許可にトライする!という使い方で有効です。


保釈請求は、保釈許可されるまで複数回トライ可能です。

ご家族や被告人の保釈請求が却下されてもデメリットはありません。

ただし、主に裁判が進行しなければ、同じ書面を何回出しても意味ありません。


○弁護人との保釈請求の方向性の不一致

弁護人による保釈請求を期待できない場合に、

ご家族や被告人本人が保釈請求をして、

裁判所の保釈判断を仰ぐことで、保釈許可される可能性があります。


○控訴審開始前の保釈請求

法テラスは、判決宣告(判決言渡し)により

国選弁護人は「活動終了」として扱っています。

実刑判決言渡し後に控訴をして、控訴審の国選弁護人の選任まで

原審国選弁護人は解任済みで「弁護人」ではなく、

控訴審国選弁護人は未選任で「弁護人」ではないため、

保釈請求権のある「弁護人」が存在しない空白期間となります。

「①保釈請求書(家族)」や「②保釈請求書(被告人)」は提出できます。

(書式は「地方裁判所」ですのでタイミングによってはご注意下さい。)


5.保釈許可中に気をつけなければならないこと

裁判所の保釈許可がされた場合、

保釈許可決定書に記載のある「保釈条件」を遵守しなければなりません。

「保釈条件」を守らないと保釈保証金が没取される危険があります。

日本保釈支援協会の「保釈中に守らなければならないこと」のマンガが参考になります。


【保釈制度一般の説明】

テレビ朝日「そうだったのか!池上彰の学べるニュース」(平成22年=2010年11月17日)

保釈制度の説明がわかりやすく理解できます。


6.保釈率/保釈許可率/保釈請求率のデータ

保釈の統計について、3種類の用語が存在しています。

「保釈率」とは,その年中に保釈が許可された人員の,当該年に勾留状が発付された人員に対する割合である。 ⇨保釈許可人数/勾留状発布人数

「保釈許可率」とは,その年中に保釈が許可された人員(終局後の保釈許可を含む)の,当該年に保釈が請求された人員に対する割合である。 ⇨保釈許可人数/保釈請求人数

「保釈請求率」とは,その年中に保釈が請求された人員の,当該年に勾留状が発付された人員に対する割合である。 ⇨保釈請求人数/勾留状発布人数

法務省資料のグラフより、各定義を引用。)

インターネットで多く見られる統計は「保釈率」です。

例:「犯罪白書」「保釈保証支援協会の保釈に関する数値データ

これまで「保釈請求率」には、注目されていませんでした。


「保釈請求率」は、平成20年の法務省の会議の資料として、

通常第一審における勾留率,保釈率等(地裁)」で公開されています。

※元データは「(注1)最高裁判所資料による」(司法統計)。

山中理司先生のブログ「通常第一審における終局人員のうち保釈された人員の保釈の時期(表6)を含む一連の文書(令和4年分の数字が書いてあるもの).pdf」より、平成&令和のデータを抽出。筆者が「不許可」と「未請求」を追加したもの。


保釈請求率」から「保釈未請求率」を割り出すと

「裁判終了まで保釈請求がされなかった事件」が

最大75.1%(H15)存在することがわかります(平成~令和4年度)。

令和時代では、45%~48.4%の事件で「保釈請求」がされません。


前述のとおり、被告人側が保釈請求をしなければ

裁判官は「保釈審査」をしません。保釈許可もされません。

裁判官はすべての事件で「保釈審査」をするべきです。


無罪推定をされた人間を勾留するのですから、

たとえ、保釈保証金を納入する見込みがなくても、

「保釈審査(許可・不許可)」までの決定をすべきです。

保釈審査のためには、被告人側が「保釈請求書」を提出する必要があります。

「①保釈請求書(家族)」「②保釈請求書(被告人)」をご活用ください。


山中理司先生のブログ「通常第一審における終局人員のうち保釈された人員の保釈の時期(表6)を含む一連の文書(令和4年分の数字が書いてあるもの).pdf」のデータ。


法務省資料「通常第一審における勾留率,保釈率等(地裁)

山中理司先生のブログ「通常第一審における終局人員のうち保釈された人員の保釈の時期(表6)を含む一連の文書(令和4年分の数字が書いてあるもの).pdf」のグラフ。


・保釈請求率(グラフ緑線)は、

昭和40年代に100%を超えますが、

平成15年には24.9%まで落ち込んでいます。

(H15:保釈請求24.9%、保釈未請求75.1%)


※なお、昭和40年代に100%を超えの数字は、

年度毎の「保釈請求人数/勾留状発布人数」を計上するため、

前年に保釈請求したけれど不許可となった事案に

翌年に保釈を請求して、二重計上されたと推測されます。


【最後に】

刑事裁判は、あなた(被告人)のための裁判です。

刑事裁判は、弁護人(あなたの代理人)のための裁判ではありません。

実際に判決を言い渡されることになる人間は、あなた(被告人)です。

筆者は一人の弁護士として「納得のいく裁判」になることを祈っています🙏


横浜家庭法律事務所 弁護士川口崇


(ご相談等について)

・事件や保釈に関する疑問は、あなたの弁護人に質問してください。

・事件や保釈のセカンドオピニオン、ご相談は有料です。著作者の川口崇弁護士への法律相談料は1時間11000円です。ご相談には予約が必要です

・著作者の川口崇弁護士に、警察署や拘置所に出向いて勾留中の被告人ご本人と面会するセカンドオピニオンをご希望の場合、初回面会報酬(5万5000円)が必要です。神奈川県外の場合には出張日当と交通費が発生します。ご家族等からご連絡をいただき、面会前に振込みで報酬をお支払いいただく必要があります。

・勾留中の被告人ご本人のお手紙による直接の面会のご希望には対応できません。必ず、ご家族等からご連絡いただくようお願いいたします。

・記事へのコメントは「公式LINE」からご送付ください💬

刑事裁判で使ってみた感想・感謝のコメントは、歓迎いたします。

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