被告人質問先行の趣旨で乙号証を「不同意」と証拠意見する場合にも「任意性を争う」べきだという提言~任意性フォーミュラ~【弁護人向け】©2024川口崇弁護士

B「不同意!任意性を争う!供述調書は作文です!
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(本稿は追記する場合があります。)

1.はじめに

本稿は、被告人質問先行実務に関する応用編(先進研究)です。
基本的な研究内容を知りたい方は、まず以下の記事を御覧ください。


本稿は、「通常事件(裁判官裁判・非裁判員裁判)」において
公訴事件を認める「認め事件」の証拠意見の研究です。
(なお裁判員裁判にも、その趣旨は及ぶものと考えられます。)

本稿は、刑事弁護の先駆者が進言してきた
「虚偽自白の任意性を争え!」の範囲を超えて
虚偽だろうが虚偽ではなかろうが、認め事件でも
供述調書の任意性を争え!」という趣旨です。

2.「任意性を争う」証拠意見書の書式

以下は、証拠意見書の書式として公開している内容です。

📖Word:乙号証不同意の証拠意見書(任意性を争う書式~任意性フォーミュラ~)

第2 乙号証について(乙第1号証~乙第○号証)

1 被告人の供述調書は不同意。被告人質問先行のため、必要性なし。

検察官が法322条1項により請求する場合、任意性を争う。およそ供述調書は、取調べに弁護人の立会いを認めず、被告人が供述調書の内容を十分に確認しないまま密室の取調室で捜査官が作文した内容であるから、任意性が認められない。

2 被告人の住民票及び戸籍謄本は、同意。

3 その余は不同意。ただし、法323条書面の要件該当性は争わない。


3.司法研修所は「任意性を争わない」弱気な姿勢を推奨

筆者は、上記の関連記事(2023年8月執筆)では、
乙号証を「不同意。被告人質問先行のため必要性なし。」または
乙号証を「不同意。必要性なし。」の証拠意見を推奨しています。
(任意性は記載しないことを推奨しています。)

一方で、司法研修所(最高裁判所)の教育内容は、

弁護人が「任意性を争う」ことに消極的です。

□司法研修所の刑事弁護教官室は、
「不同意。任意性は争わない。採否を留保し、被告人質問を先行されたい。」または
「不同意。任意性は争わない。被告人質問を先行されたい」を推奨します。
(「刑事弁護の手引き(令和4年4月)」22頁・28頁)

※被告人の供述調書の「不同意」推奨は明確です。
公訴事実の争いの有無にかかわらず不同意」(手引き22頁)
裁判員裁判か裁判官裁判かを問わず不同意」(手引き28頁)
(この部分は、司法修習生が理解しやすいため好感が持てます。)

□司法研修所の刑事裁判教官室は、
「不同意,但し任意性は争わない。」または
「同意」「審理に必要な内容は,被告人質問において供述する予定である。」を想定しています。
※ただしプラ刑は裁判員裁判&否認事件の事例。通常事件&認め事件の証拠意見は立場未表明。

※刑事裁判教官室は、(任意性以前の問題として)
弁護人の証拠意見をアップデートできておらず、
弁護人に「同意」の選択肢があるように記載しています。
関連記事で詳しく説明しています。


司法研修所は、弁護人に対し、認め事件において
自白調書は「任意性は争わない。」旨を
予め表明することを推奨しています。
司法研修所が「任意性ギブアップ意見」を推奨することは、問題です。

実務では、被告人質問の実施後に「撤回」されることも多い
自白調書について、未だ検察官が法322条1項請求をしていないのに、
弁護人が証拠意見段階で任意性を争わない表明をするべきではありません。


筆者は、2023年、関連記事の執筆当初、
証拠意見書の書式は公開しておらず、
「任意性は争わない」任意性ギブアップ問題を指摘して、
一般的な任意性に争いが無い場合には、
「任意性は争わない」を書かないこと(不記載)を推奨しました。

当初の記事は、
裁判官に口頭で任意性を聞かれた場合に
口頭で「任意性は争わない。信用性は争う。」と
回答するよう助言していました。

乙号証不同意(⇨被告人質問先行)の
初心者向けに執筆したため、
せめて「任意性に触れるな!」
「任意性は争わない。と書くな!」と助言しています。

(関連記事より引用)

弁護人は裁判官の不同意理由の釈明があった場合に回答を求められます。

◎裁判官が「AQ先行の趣旨ですか」と的確に釈明すれば、弁護人は「はい」と回答すれば足ります。

①任意性を争う場合は「不同意。必要性なし。任意性を争う。」と明記してください。

任意性を争わない場合は記載不要です。裁判官の釈明があれば「任意性は争わない。信用性は争う。」と口頭で回答してください。

②信用性は「争う」「争わない」を明記する必要はありません。

裁判官の釈明があれば口頭で「任意性は争わない。信用性は争う。」と回答してください。

弁護人が裁判官の釈明に慌てないようにまとめました

乙号証はAQ後に検察官が撤回することも多いので、本来、

弁護人の証拠意見直後の「任意性」と「信用性」の釈明は先走ったタイミングです。

裁判官は、AQ後に検察官の法322条の請求があった段階で釈明すれば足りる、と考えます。


4.弁護人はもっと気軽に「任意性を争う」べき

関連記事では、後に「証拠意見書」の書式を公開しました。
これは、不慣れな弁護人に対して、(認め事件でも)
証拠意見書を作成しなければならない。」という
概念をインストールさせようという試みでした。

最初のバージョンの証拠意見書(任意性は書かない内容)
最初のバージョンの証拠意見書の書式では、
「不同意。被告人質問先行のため、必要性なし。」としました。

しかし、書式を作成して改めて立ち止まって考えると、
弁護人が任意性を争ってはいけない理由がないことに気づきました。

法319条1項・法322条1項但書のうち、
「その他任意にされたものでない疑のある自白」として、
「任意性を争うべき(一応の≒一定の)理由」さえ主張できれば、
弁護人は、むしろ「任意性を争うべきだ」と考えました。

弁護人は、もっと気軽に任意性を争って良いのではないか?

次のバージョンの証拠意見書は「任意性を争う。」内容。
そこで、次のバージョンの証拠意見書の書式では、
「検察官が法322条1項により請求する場合、任意性を争うおよそ供述調書は、取調べに弁護人の立会いを認めず、被告人が供述調書の内容を十分に確認しないまま密室の取調室で捜査官が作文した内容であるから、任意性が認められない。」としました。

事件の種類・被告人・供述調書の内容を問わず、
すべての供述調書に通用する「任意性を争う」後段理由
予め作成して書式化しました。筆者の解決策です。
これを「任意性フォーミュラ」と呼称します。

弁護人(被告人)には「争点形成責任」があるものとされるため、
弁護人が単に「任意性を争う。」と記載してしまうと、
裁判官は「どういう任意性のご主張ですか?」と聞いてしまいます。
それでは、初心者弁護人が困ってしまうため、
予め後段理由を記載して「任意性を争う」理由を明記しました。

任意性を「争う」「書かない」「争わない」メリットとデメリット


※典型的な任意性を争う事例(強制、拷問又は脅迫による自白、不当に長く抑留又は拘禁された後の自白)ではない場合にも、「供述調書」一般の作成過程をもって「任意性を争う」争点の主張をすることができます。簡易裁判所等の裁判官が、「必要性なし」意見により被告人質問先行をさせなければいけない場面で、被告人質問実施前に法322条請求を採用してしまう危険があるパターンで、「必要性審査」に加え「任意性審査」を求めることで、被告人質問先行をより強く求めることができます。(通常は、不同意意見だけで、被告人質問先行になるため、任意性を争う証拠意見書は必須ではありません。)この意見書の狙い・ゴールは、被告人質問による「任意性審査」自体(及び副次的な被告人質問による「必要性審査」)です。これは「任意性審査を目的とする任意性主張」です。

📖Word:乙号証不同意の証拠意見書(任意性を争う)

これは、季刊刑事弁護118号(現代人文社@2024年4月)を受け、補足した内容です。

簡易裁判所の裁判官は、

検察官が法322条請求をすると、

不同意意見を受けてAQ先行を実施せず、

被告人質問の実施前に請求を認めてしまうことがある

という実務上の問題の対策として、

「任意性を争う」旨の証拠意見書の書式を作成しました。

関連記事の「3-12 弁護人の不同意意見を無視したAQ後行の違法性」に詳述します。


【実務でも不任意主張が通用しました】

筆者は、その後、複数件の通常事件(かつ認め事件)において
「検察官が法322条により請求する場合、任意性を争う。」
とする証拠意見書を提出しました。
※1件は自白調書。もう1件は否認調書で公訴事実は認めです。
(現在まで、すべての事案で任意性フォーミュラを使用しています。)

幸い、裁判官から、任意性の釈明をされませんでしたので、
「任意性を争う」書式が実務でも有効に使えることが実証されました。
(審理は被告人質問先行となり、乙号証は撤回されました。)

5.令和時代に「争点形成責任」は古い(かもしれない)

任意性の争点形成責任は、
裁判官が「任意性に問題が無いのであれば、乙号証を採用したい」
という「調書裁判」を前提とした訴訟指揮であったといえます。

(過去、ほとんどの)裁判官が「調書裁判」をしてきた理由は、
事件=被告人をベルトコンベア方式で大量処理しなければならず、
認め事件なのに、法廷で直接話を聞いていられない!という
昭和・平成の価値観があったからなのだと思われます。

※ただし、刑事事件数は年々減っていますから、
令和時代に大量処理するべき要請はありません。
「刑法犯の認知件数は、昭和期は120万件から150万件で、平成元年には160万件台でしたが、急増し、平成14年に280万件を超えました。その後減少に転じ、平成30年には約82万件と、平成元年の半分、ピーク時から7割以上も減っています。」
(京都産業大学 田村正博教授 「犯罪は増えていて凶悪化している」という誤解より引用。)
過去のベルトコンベア方式の「調書裁判」
©️いらすとや(裁判官ベルトコンベア

裁判官は、乙号証を採用する「調書裁判」を前提に、
1.被告人質問の実施前に、任意性の主張を聞きたい。
2.便宜的に証拠意見のタイミングで争点を聞きたい。
3.1度の被告人質問で、罪体等だけでなく、任意性を主張&反論させたい。(裁判所視点のタイパ)
4.そのうえで乙号証を証拠採用決定したい。
という訴訟指揮をしてきたのだと推察します。

※2:本当は、@証拠意見時ではなく、他の証拠採用後、
@被告人質問実施直前のタイミングでも間に合うものの、
便宜的に@証拠意見時に聞いているのだと考えられます。

※3:1度のAQは、調書裁判の効率化の観点です。
「被告人が任意に供述をする場合には、裁判長は、何時でも必要とする事項につき被告人の供述を求めることができる。」(法311条2項)ため、裁判官は、訴訟指揮により、1度目を「罪体等のAQ」(一般的なAQ)とし、必要性審査の終了後に、(ア:多数)検察官が撤回であれば1度で終わり、(イ:少数)検察官が法322条請求をして任意性立証を求める場合にのみ、2度目に「任意性のAQ」をすることで、間に合います。
現在では、検察官が法322条請求せず撤回することの多い被告人の供述調書について、わざわざ任意性を1度のAQで主張立証させることは、むしろ時間の無駄でありタイパが劣ると考えられます。

(2)公判期日における自白等の任意性の立証方法

 公判前整理手続が導入されるまでは、自白または不利益な事実の承認の任意性の立証は、公判前整理手続を経ないことから、公判廷においてはじめて主張され立証がなされてきた。すなわち、

検察官から被告人の供述調書の取調べ請求がなされると、

裁判所は被告人側に証拠意見をもとめ

被告人側が同意との意見を述べると326条1項により採用し、これを取り調べ、

不同意との意見を述べると、

立証趣旨等から自白または不利益な事実の承認を内容とするものであると考えられる場合は、弁護人に対して、任意性を争うのかどうか釈明が求められ

弁護人が任意性は争わないが、信用性は争うというときは、322条1項前段により証拠として採用され

任意性を争うときは、被告人質問を先行して行い、検察官から取調官の証人尋問によって任意性立証がなされる

というのが一般的であった。

 このような審理の方式では、具体的な主張を行うことで、かえって検察官に取調官の証人尋問に備える準備をさせることになってしまうという防御上の不利益を考慮して、被告人側は、「任意性を争う」とだけ述べて、裁判所の釈明にも、任意性に疑いがあることを基礎づける事情について具体的に主張することをしないこともあった

また、検察官も、証人として尋問した捜査官から、任意性を疑わせるような取調べをしたことはないし、被告人の言うことは虚偽である旨を述べるにとどまり、取調べの際の捜査官と被告人との具体的なやりとりや調書作成の有無や経過について立証することあまりなかったと思われる。


「調書裁判」をしていれば、
裁判官は、法廷で被告人の話を直接聞きません
(一般情状・反省を聞くくらいでしょう)から、
判決文は、供述調書(作文)を前提とした内容となり、
刑事裁判は、硬直化・形骸化した儀式に陥ります。

多くの裁判官は、事態を真剣に考えずに、
昔の司法研修所が作成したテンプレに従って、
「証拠意見で任意性を争ったな?」
⇨「争点を聞かなきゃ!」という使命感で、
弁護人に任意性の争点を聞いてきたのだと思います。

調書裁判時代の裁判官たちは、
任意性を主張してもほぼ却下しませんでした。
従順な弁護人たちは、
不任意の「具体的な主張」を考えることが負担であり、
「調書裁判」の裁判実務に呆れて、絶望して、諦めて、
任意性を争わない」妥協をしてきた経緯があります。
争点形成責任の重圧から任意性主張を放棄して、
任意性は争わない。信用性を争う」主張に逃げてきました。

※2013年の書籍でも、弁護人が「刑事弁護実務上、任意性をめぐる争いそのものを放棄し、信用性のみを争う、といった例も多く生じていた。」と、弁護人が自ら任意性主張をギブアップする姿勢の問題点が指摘されています。

秋田真志弁護士「自白の任意性立証にどう対処するか」『刑事弁護の現代的課題2』405頁※「1はじめに」部分より引用 (第一法規 2013年)。

「1はじめに

 刑事弁護にとって、虚偽自白(注1)との闘いは、永遠ともいえる課題であった。戦後相次いだ冤罪事件において、常に問われたのは、自白の任意性であり、信用性であった。代用監獄廃止、接見交通権の確立、取調べの可視化実践など日弁連が取り組んできた運動も、このような虚偽自白をいかに防ぐか、という闘いそのものであった。

 それでは、検察官が、虚偽自白を公判で証拠として請求してきた場合、私たち弁護人はどのように対処すべきか。いわゆる任意性立証への対応の問題である。検察官の任意性立証を許さず、虚偽自白を証拠として採用させないことは、冤罪を防ぐ最後の防波堤といえる。

 しかし、残念ながら、この「最後の防波堤」の「闘い」において、私たち弁護人は、十分な成果を果たしてきたとはいえないであろう。

 その主たる原因は、何より取調べが可視化していない密室で行われていること、そして、裁判所が任意性について緩やかな基準を取ってきたこと(注2)であることは疑いの余地がない。しかし、任意性立証をめぐる闘いにおける敗北の要因を、密室取調べや裁判所の姿勢のみに求めるのは、公正とはいえないであろう。弁護人側において、任意性立証への対応策として、十分な技術的・理論的な深化があったとまでは、いい難いように思われるからである。時として、刑事弁護実務上、任意性をめぐる争いそのものを放棄し、信用性のみを争う、といった例も多く生じていた。これも、任意性をめぐる争いのハードルの高さとともに、弁護技術として、任意性立証への対応策が確率していなかったことと無縁ではないように思われる。」(続く)

注釈「1 虚偽「自白」というと、罪体の主要部分における供述の虚偽性のみが問題になりそうであるが、密室取調べでは、犯行に至る経緯や間接事実、情状事実などの「不利益事実の承認」について、広く虚偽供述の強要や取調官の作文・押しつけなどが問題となる。しかし、議論を簡明化するため、本章では、原則として、取調べで問題となる虚偽供述一般を代表するものとして、「虚偽供述」の語を用いることとする。」

注釈「2 裁判所が、自白の任意性判断において、緩やかな基準を取ってきたことについては、元裁判官の視点から批判的な検討を加えた木谷明『刑事裁判の心-事実認定適正化の方策<新版>』法律文化社(2004年)55頁以下、同『事実認定の適正化-続・刑事裁判の心』法律文化社(2005年)50頁以下、同『刑事事実認定の理想と現実』法律文化社(2009年)95頁以下等が非常に参考になる。」


現在の単独公判を担当できる多くの裁判官は、
司法研修所作成の過去のテンプレである
司法修習・裁判官研修を受けてきたのだろうと思われます。

そして、司法研修所作成のテンプレの考え方は、
根源的には変わっておらず、現在の白表紙である
弁護人の意見:不同意 の場合に、
[ 信用性を争う趣旨 ]と[ 任意性を争う趣旨(任意性の疑いの根拠の主張) ]
が選択的に示され、弁護人が「任意性を争う」場合に、
任意性の疑いの根拠の主張(⇨争点形成責任)を
弁護人に求めるテンプレとなってしまっています。

裁判官が弁護人に対して、証拠意見段階で
「任意性を争うのか?
(信用性のみ争うのか?)」と問う姿勢は
調書裁判テンプレ教育が生んだ悪癖の名残です。

6.「争点形成責任」とはなにか?

争点形成責任のリーディングケースとして、
最判昭23年7月14日(刑集第2巻8号856頁)があります。

最判昭23年7月14日(刑集第2巻8号856頁)


・最高裁裁判官の多数意見
被告人は原審公判において裁判長から司法警察官の第一回訊問調書中、Aに対する殺意のくだりを読み聞かされた際に「その時は警察官に叱られたので、左様に殺すつもりで殴つたと申上げしまたが実際は殺す気がなかつたのであります」と述べ、また第一審公判においても、同様右調書について「係官がそうだろうそうだろうと申すので とうとう そうだと申しておいたのでありましたが云々」と述べていることは記録上明らかであるけれども、これだけのことにわつて、直ちに、右自白が強制にもとずくものであるということのできないのは勿論であるのみならず、この点に関して、原審でも、第一審でも、被告人からも、弁護人からも、右訊問の衝にあたつた栃木県警察署のB警部補を証人として訊問の申請をした事実のないところからみても、被告人の右の供述も、強く右訊問の不公正を主張した趣旨ではなく、要するに、公判において、Aに対する殺意を否認したのに過ぎないと解するほかなく、その他事件の全般を通じて右自白が強制にもとずくものであることを思はせる何等の根跡もない本件においては、弁護人の右の論旨は、とうてい採用することはできないのである。
(論旨が強制処分に基く判事の訊問調書中被告人の供述として摘録しているところは、記録によれば検事の訊問調書中の被告人の供述を誤つて摘録したものであること明白であり、しかも、右検事の訊問調書は原判決が証拠として採用していないところである。)
また原判決には所論のような、相互に矛盾した証拠を採用した違法もなく、その他論旨は畢竟、原審の専権に属する事実の認定を非難するものであつて、上告適法の理由とならない。

(最高裁に報告済みのPDFの誤字。)
※(誤)「申上げしまた」⇨(正)「申し上げました」。
※(誤)「これだけのことにつて」⇨(正)「これだけのことにつて」


栗山茂裁判官の少数意見
被告人が裁判所で、司法警察官なり検察官なりの聴取の際に、強要されたと主張するとすれば、論理上は一見主張する側に挙証の責があるように思はれるけれども、実は公訴機関が右聴取書を証拠として提出する以上は、(弾劾制度の建前からいえば左様に考えるべきものである。)強制が加はつていない供述だけを証拠として提出すべき義務があるものであるから、公訴機関側に強制が加はつていないことの挙証の責があるというべきである。而てこれは刑訴応急措置法第十条がある以上、事実審理にあたる裁判官の看過してはならぬことである。こう考えると、第一審第一回公判で被告人が司法警察官に聴取の際強要されたと主張する以上、裁判所は検察官側に対して右聴取書に強制が加はつていないことを立証させ強制の事実を取調べた上でなければ、被告人の供述を証拠にとれないものというべきである。即ち被告人乃至弁護人が本件警察官を証人としてその喚問を申請しなくとも裁判所は職権を以てその事実を取調べて、被告人の主張する強制があつたとしても、経験則上その強制が憲法第三十八条刑訴応急措置法第十条にいう強制かどうかを判断した上で証拠にとるべきものである。第一審で右の手続をとらなかつたとすれば控訴審第一回公判でも被告人は右強制の事実を主張したのであるから同様の手続をとるべかりしものである。かゝる証拠法の手続を確立しない以上は憲法第三十八条の国民の特権はいつまでたつても尊重されないことになるのである
 或はかような手続を確立せしめること、狡猾な被告人は絶えず裁判所で強制の事実を口実にして、犯意を否認するであろうし又その違憲性を口実に上告理由とするであろうと言はれるかもしれないが、事実審でかゝる手続をとることが犯罪捜索の機関が不当に人権をじうりんしないことにもなり他面事実審理の裁判所としても国民の特権を尊重する以上は一応は強制の事実を取調べて証拠法の手続の確立を期すべきであろう。又上告審としては、自由の任意性についての判断は事実に関する判断であるから、事実審裁判所がした判断が経験則に反することが顕著でなくては、法律問題として取扱う要のないものといえるから、かゝる証拠に関る手続を事実審が実行する以上は、かような問題が上告の理由になることも稀な場合であろうと思はれる。


九州大学 井上正治教授自白の任意性」を一部引用(1957年)
※半世紀以上前の論文が、供述調書の任意性の問題の本質をついています。
(ネット上の学術論文には、井上論文以上に明晰に分析したものが見当たりません。)

133-134頁「栗山裁判官の意見によれば、被告人が強制による自白だと主張する限り、検察官は直ちに強制によるべきものでないことを証明すべき義務を負う。蓋し、検察官が、自白の任意性につき挙証責任を負担するからである。
しかし、多数意見はそう考えない。被告人のこの程度の主張では、まだ裁判所に一応の疑問を抱かせる程度に達しないから、検察官は自白の任意性を積極的に証明するには及ばないものとなす。ここに一つの問題がある。被告人は、何故、一応の疑問を抱かせる程度にまで主張する必要があるのか。」

135頁-137頁
自白調書は、かりに形式が備わっていても、任意性の推定をうけないのではないか。その意味は次のごとくなる。さきにも述べたように、検察官の提出しようとする自白調書は、一定の形式によっているのが原則である。まず、黙秘権は告知され、供述の後その内容を読み聞かされて被告人が署名押印している調書である。自白調書が以上のような形式を与えていれば、それだけで直ちに、検察官としては自白の任意性を立証したことになるのか。もしそうであれば、自白の任意性を争うためには、被告人の側で反証しなくてはならない。しかしそう考えるべきではない
自白の任意性を争うことは、却って、自白調書の形式にさえ疑いを抱くことにほかならない。強制されて自白せざるを得なかった被告人としては、その調書に署名、押印を拒み得ないのが当然であろう。
その上、検察官も当事者であることを忘れてはならない。調書は、当事者たる検察官の頭脳をとおして作成されている。こうして作成された調書には、自白せしめられた雰囲気は決して記載されてはいない。検察官が作成したということだけでは調書を信じえないばかりでなく、却って、制度としては疑うべきではないか。
そこで、本来なれば、検察官が、自白を証拠として提出しようとすれば、その都度自白の任意性を立証すべきであった。
しかし、これは、さきにもふれたごとく、ほとんど不可能に近い。だから、被告人側から自白の不任意なることにつき、「主張」のない限り、検察官は不任意について証明する必要はない。いいかえれば、検察官は、被告人の主張した事実につき、その不存在を証明すべきであり、それを証明すれば、挙証責任を尽くしたことになるこの意味で、自白の任意性については、検察官が挙証責任を負い、被告人は主張責任を負うにとどまる。しかし、被告人には、形式的な意味ででも、挙証責任の分配はない
こう考えてくると、訴訟法的には次のようになる。検察官としては、被告人がたんに任意性を争う旨の「申立」をした程度では、いまだ積極的に任意性を立証する必要はない。被告人は、たんなる「申立」以上に、不任意であることを「主張」しなくてはなるまい栗山裁判官が、「被告人が司法警察官に聴取の際強要されたと主張する以上」検察官の立証を要するとされるのも、この趣旨に解すべきである。
いいかえれば、任意性を争おうとする主張が、主張として重要(erhebich)なものでなくてはならない。主張として重要でないとみられれば、理由のないために、不適法と評価される。たとえば、「強制による」「任意にしたものではない」等の主張の程度では、主張として理由づけられてはいない。それ故、被告人としては、「疑のある」事実を主張しなければならないが、それで足りる  (十五)
そこで、結論として、被告人が任意性のない疑のある事実を主張すれば、それだけで直ちに、検察官は、主張された事実につき自白の任意性を証明すべきである。その程度では、いまだ一応の疑をいだかせる程度に達しないなどと考えて、任意性の判断を被告人に不利益にとり扱い、結局、自白法則を無意義なものにしてしまうことには賛成しがい。ところが、遺憾ながら、実際の処理を検討すると、被告人の利益に働いているとはいえない。」


>弁護人が任意性を争う場合には,実務上,任意性に疑いがある事情を具体的に特定して主張しなければならないこととされている。(実務上、争点形成責任がある)


任意性の「主張」が必要であるとしても、結局、
どこまでの重要性をもった主張をするべきかはブラックボックスです。

井上正治教授は、注釈 (十五)で【しかし、本件については、多数意見にもみられたように、被告人は、「その時は警察官に叱られたので……」「そうだろうそうだろうと申すので……」と述べている。これは主張として十分理由がある。】と解説しています。すなわち、判例の事案では「主張として重要」な任意性の主張をしていた、という整理です。

井上正治教授の論文の整理をまとめると、要旨、
・弁護人(被告人)が、単なる不任意の「申立」をしただけでは足りない。
・弁護人(被告人)は、不任意であることを「主張」しなくてはならない。
・弁護人(被告人)の「主張」レベルは「重要」である必要がある。
・注釈(十五)「警察官に叱られた」や「そうだろうそうだろう」と誘導されたという比較的軽度な不任意の理由であっても「主張として重要」レベルを満たす(「申立」ではなく「主張」として十分。)。
・そうすると、検察官は、任意性の挙証責任を果たさなければならない。

証拠意見書の書式を例に検討します。
「被告人の供述調書は不同意。被告人質問先行のため、必要性なし。
検察官が法322条1項により請求する場合、任意性を争う。
およそ供述調書は、取調べに弁護人の立会いを認めず、被告人が供述調書の内容を十分に確認しないまま密室の取調室で捜査官が作文した内容であるから、任意性が認められない。

検察官が法322条1項により請求する場合、任意性を争う。
⇨これだけでは「申立」になってしまう。

およそ供述調書は、取調べに弁護人の立会いを認めず、被告人が供述調書の内容を十分に確認しないまま密室の取調室で捜査官が作文した内容であるから、任意性が認められない。
⇨「警察官に叱られた」や「そうだろうそうだろう」誘導は、令和時代の取調べでも一般に行われます。そうすると、証拠意見書の書式程度の抽象的な理由でも、任意性を争う「主張として重要」レベルを満たすと解します。

つまり、証拠意見段階で法322条請求を認める簡易裁判所裁判官に対して、強く被告人質問先行を求める理由としては十分です。
さらに、証拠意見段階で「任意性を争うのか」を聞かれないように「任意性を争う」旨を明言することにより、JB間のやり取りが省エネ化されます。

なお、この形式的理由のみで、「任意性ナシ(不任意)で採用を却下する」理由としては、強くはないと考えます。(判例上で不任意となる理由があれば、別途主張するべきです。)

それでも、裁判官の立場から考えると、被告人質問後に「必要性ナシで採用を却下する」方が「任意性ナシ(不任意)で採用を却下する」よりも、控訴審を考えれば安全でしょう。(必要性ナシであれば、検察官から「捜査官を証人尋問していない」瑕疵の異議を出される可能性がある任意性の有無の争点に立ち入らなくて良いので。)


>①争点形成責任の必要性について(任意性立証が「悪魔の証明」?)

そもそも、法322条自体が、伝聞「例外」です。
検察官には、被告人質問による直接立証が許されています。
検察官は、被告人質問で、供述調書の具体的内容について
質問することができ、供述調書の内容にも触れることができます。
検察官には、1.被告人質問により直接立証をするチャンスがあります。
検察官が、2.チャンスに失敗した場合に、法322条により
供述調書自体を証拠請求する伝聞「例外」が認められるに過ぎません。
その2.伝聞「例外」における任意性立証が「悪魔の証明」だから、
被告人質問の実施前(一般に証拠意見段階)において、弁護人が
「任意性に疑いがある事情を具体的に特定して主張しなければならない」とすることは、
裁判所が、検察官の能力を低く見積もり過ぎ(検察官をバカにしている)と思えます。
検察官には、直接立証のチャンスを生かせないだろう、と。

裁判所は、被告人質問実施後に、2.検察官が法322条請求をする場合に限って、
弁護人に意見(異議)を聞く段階において、任意性の具体的主張を求めれば足ります。
その点、任意性審査をするのであれば、追加の被告人質問をしたうえで、
検察官の請求に応じて、捜査官の証人尋問をすれば良いものの、
実際には、その前段階の証拠の「必要性」「関連性」で却下されることが多いはずです。
※被告人質問先行⇨撤回は、プロシーディングス刑事裁判58頁で紹介されています。
「証拠決定は留保したまま被告人質問を先行して行い,その終了後に,更に供述調書まで取り調べる必要性があるか否かを検討した上で,証拠決定されることが多く,検察官が自主的に証拠調べ請求を撤回することもある。」


>②争点形成責任の許容性について(被告人は体験事実を不当な負担なく主張できるか)

被告人に不可能を強いています。
近年、黙秘権を侵害する事件が複数明らかになったように、
「強制、拷問又は脅迫による自白」「不当に長く抑留又は拘禁された後の自白」
等の典型パターンにあたらないように、捜査官は供述調書を作成(作文)しています。

任意性のある供述調書は存在するのか?

証拠意見書の書式が筆者の回答です。
「被告人の供述調書は不同意。被告人質問先行のため、必要性なし。検察官が法322条1項により請求する場合、任意性を争う。およそ供述調書は、取調べに弁護人の立会いを認めず、被告人が供述調書の内容を十分に確認しないまま密室の取調室で捜査官が作文した内容であるから、任意性が認められない。

敵対する捜査官が作文した供述調書について、
「任意性の推定」をすることはできません。
半世紀以上前に書かれた論文、
九州大学 井上正治教授自白の任意性」(1957年)を読んで、
弁護人・裁判官には、今一度、考えていただきたいと思います。

B「任意性を争う」シミュレーション
(本稿オリジナル©️2024川口崇)

7.「被告人の自白調書の取扱い」テンプレ(参考)

プロシーディングス刑事裁判〈平成30年版〉57頁【図16】も同旨(初版54頁も同じ)。


【被告人の自白調書の取扱い】(論文より引用。原典は司法研修所)
B不同意⇨J「任意性を争う」or「信用性のみ争う」を釈明しがち。

【被告人の自白調書の取扱い】を分析すると、

「調書裁判」をやりたい昔の裁判所の意向が見て取れます。


本来、弁護人が「不同意」の理由を言う必要はありません。

刑事訴訟法・刑事訴訟規則には、

「弁護人が不同意理由を言え」と書いてありません。

裁判官が弁護人に対して「不同意理由の釈明」する行為自体、

J「なんで弁護人は不同意にするの?調書裁判できないよ?」

という裁判官の意思表示(プレッシャー)です。


「釈明」以降も弁護人を調書裁判の袋小路に追い込みます。

①信用性のみ争うパターン(図左)

B「信用性のみを争う(任意性を争わない)」

⇨J「不同意-同意意見の変更(の打診という名の強制)」

⇨J「法326条により採用・取調べ」⇨調書裁判の実現

(B不同意維持でも、JはAQ実施前に法322条で採用してきた。)


②任意性を争うパターン(図右)

B「任意性を争う」

⇨J「任意性を争う内容の主張を言わせる(争点形成責任)」

⇨B「・・・」(任意性主張ができない、わからない)

⇨J「不任意主張されないで信用性のみで良いのではないか」

⇨①信用性のみ争うパターン(図左)へ

⇨B「信用性のみを争う(任意性を争わない)」

⇨J「不同意-同意意見の変更(の打診という名の強制)」

⇨J「法326条により採用・取調べ」⇨調書裁判の実現


裁判官に【被告人の自白調書の取扱い】をやられて、

過去の弁護人たちが萎縮してきた気持ちも理解できます。

刑事弁護実務上、任意性をめぐる争いそのものを放棄し、信用性のみを争う、といった例も多く生じていた。」⇨調書裁判の因果です。

秋田真志弁護士「自白の任意性立証にどう対処するか」『刑事弁護の現代的課題2』405頁※「1はじめに」部分より引用 (第一法規 2013年)。



プロシーディングス刑事裁判〈平成30年版〉57頁(初版54頁)【図16】
弁護人の意見:不同意
[ 信用性を争う趣旨 ]
[ 任意性を争う趣旨(任意性の疑いの根拠の主張) ]

法326条の「同意」の意義については,理論的には反対尋問権の放棄を意味するとの説もあるが,実務では,証拠能力を付与する意思表示という考え方が強い。最近では,同意を「伝聞性の解除」として説明する説も有力である。
法322条1項は,被告人の供述調書について,自白調書をはじめ被告人に不利益な事実の承認を内容とするものである場合等には,証拠とすることができると定めている。ただし,任意にされたものでない疑いがあるときには証拠とすることができない(法319条1項,法322条1項ただし書)。
したがって,もしも,弁護人の不同意の趣旨が信用性を争うにすぎない場合(任意性には争いがない場合)には,検察官は,当該供述調書が不利益な事実の承認を内容とするもの等であれば,これを法322条によって取り調べられたいと請求するのが通常である。

弁護人が任意性を争う場合には,実務上,任意性に疑いがある事情を具体的に特定して主張しなければならないこととされている。この限度で弁護側に特定させる理由は,①そうしないと,およそあらゆる疑いがないことを検察官が立証しなくてはならないこととなるが,それは「悪魔の証明」を強いることに等しいこと,②その一方で,被告人にとっては,自己の体験した事実である上,罪体に関する事実ではないので,この点について明確にさせることが不当な負担を与えるものとはいえないこと,などである。
そのような具体的な主張があった場合に,なお被告人の供述調書を証拠として採用してもらいたいときには,検察官は任意性を立証しなければならないこととなる。

Q検察官が,被告人の自白調書の任意性を立証したい場合には,どのようにこれを行っていくのか。
被告人の供述調書の証拠能力という側面からの説明は上記のとおりであるが,そもそも,被告人は,常に法廷にいるので,まずは被告人質問を実施することが直接主義・公判中心主義の趣旨に沿うものである。このような観点から,実務では,被告人の供述調書について,弁護人の同意,不同意の意見にかかわらず,証拠決定は留保したまま被告人質問を先行して行い,その終了後に,更に供述調書まで取り調べる必要性があるか否かを検討した上で,証拠決定されることが多く,検察官が自主的に証拠調べ請求を撤回することもある。

※なお、プロシーディングス刑事裁判の上記部分(最後のQ)をよく読むと
「Q検察官が,被告人の自白調書の任意性を立証したい場合には,どのようにこれを行っていくのか。」の回答(被告人質問先行の実務の紹介)は、的確な回答になっていません。
A(想定される回答)「被告人の自白や不利益な事実の承認の任意性(319条1項、322条1 項前段)に関しては、公判での被告人質問と捜査官の証人尋問とで任意性立証がなされるのが通例であった。しかし、しばしば取調べ段階で任意性を疑わせる事情があったか否かについて被告人と捜査官との水掛け論に終始した。そのため、裁判所として客観的に任意性の有無について判断を下すことが容易ではないこともしばしばあったように思われる。」
この論文の一文に相当する文章がないと、文意が通じません。

 〆 横浜家庭法律事務所 弁護士川口崇

【任意性争点化の啓蒙(おまけ)】

被疑者A権利ダチやられてんのに、 "任意性"調書裁判日和ヒヨってる 弁護士いる?いねえよなぁ!? "任意性"調書裁判潰すゾ!!!」

内閣府の「成人年齢」コラボを見習って、
日弁連も「任意性争え」コラボして啓蒙されたい。
「任意性卍リベンジャーズ」キャンペーン等。
 
政府広報(オリコン転載)YouTube引用
©和久井健・講談社アニメ「東京リベンジャーズ」製作委員会


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